個人18

悪徳金融業者に巻き込まれると大変です

背景
 松山さん(仮名)は40代のトラック運転手。妻と4人の子ども(高校生・中学生・中学生・小学生)がいます。
 松山さんは、仕事と子育てに追われる日々を過ごしていましたが、ある時、商品先物取引に手を出してしまったことで、窮地に追い込まれることとなります。
 きっかけは、○×商事の外交員からの電話勧誘でした。「灯油を買って儲けませんか。これからは灯油がいいので絶対儲かります」というストレートな勧誘に対し、先物取引の意味も解らなかった松山さんは、一旦は勧誘を断りました。しかしながら、丁寧に電話応対した松山さんに可能性を感じたのか、勧誘の電話はその後も半年ほど続き、その度に「絶対儲かります」「私達が取引を指示するから大丈夫です」などと繰り返されるので、そのうち、松山さんも外交員の話に耳を傾けるようになっていきました。
 当時、松山さんは次男の高校進学を控えて学費捻出に汲々としており、絶対に儲かるという言葉はとても魅力的でした。結局、外交員が丁寧に指導してくれるという言葉が決め手となって、松山さんは、預金全額に近い300万円を預託して取引を始めることになったのでした。

ご不安
 破綻はすぐにやってきました。
 取引開始のわずか一週間後に、松山さんは○×商事の従業員から「オイショウが必要」と言われて、追加入金を要求されましたが、既に預金をはたいて取引を始めた松山さんに、追加入金できるお金などありません。結局、その時点で取引は終了となりましたが、その結果、松山さんには412万円の売買差損が生じたということで、300万円が戻ってこないのみならず、○×商事から100万円の支払請求を受けることになりました。
 松山さんは、何故あっという間に300万円がなくなったのか、何故更に100万円の支払請求を受けているのか全く理解できないというところで、私の事務所に相談に訪れました。

アドバイス
1 先物取引の説明
 先物取引は、対象商品が将来値上がりするか値下がりするかを予想しながら取引を行います。例えば、対象商品が将来値上がりすると考えた場合、現時点の価格で後日その商品を買うという約束を現時点でしておけば、後日、予想通り対象商品が値上がりした場合には、安い値段でその商品を仕入れ、それを高い値段で転売することができるので、利益を得ることができます。逆に、予想が外れて対象商品が値下がりした場合には、高く仕入れて安く売るということになってしまい、損失がでるということになります。(なお、実際には、期日までに反対売買で清算する場合には、現実に対象商品がやりとりされることはありません。)
  また、先物取引は、少額のお金を預けることで、その数倍・数十倍の規模の取引を行うことができるので(=レバレッジ)、将来の商品値動き如何では自分の投資した金額以上の損失が生じる可能性があるという点が特徴となります。
2 事案の把握
 相談に来られた時点で、松山さんは「灯油の先物取引」とは灯油そのものを購入することだと誤解しており、レバレッジの概念も理解していませんでした。当然、どのような取引をしたのかもちんぷんかんぷんです。そこで、まずは、○×商事から取引履歴(=委託者別勘定元帳)を取り寄せることから始まりました。
 数週間後に届いた取引履歴の内容を確認すると、先物取引初心者であるのに最初から多額の取引が行われている(=新規委託者保護義務違反)、松山さんがトラック運転中の時間に、松山さんに無断で取引が行われている(=無断売買)、正反対の性格の取引(同一期日に同一商品を売る取引と、買う取引)が行われている(両建 善管注意義務違反)等の問題ある取引が次々と判明しました。
 無断売買は論外として、先物取引会社は、客が注文すればどんな取引でも行ってよいということではありません。先物取引は、理解できない人にとっては博打でしかないので、先物取引会社には顧客の理解に応じて取引を制限する義務が課せられています。
 しかしながら、実際には、先物取引会社は顧客が取引をすれば手数料収入が入るので、顧客が損をする取引でも平然と勧めることが少なくありません。これを客殺しといいますが、松山さんが外交員に勧められるままに行った取引は、まさにこの客殺しでした。
3 損害賠償請求
 これらの問題点をとらえて、損害賠償を求めて○×商事と交渉を行いましたが、○×商事の側では、損失補填が禁じられているという理由で請求に応じませんでしたので、最終的には訴訟提起を行いました。その結果、○×商事が松山さんに200万円を支払うことで裁判上の和解が成立しました。(なお、うまい話に乗ってしまった松山さんにも落ち度があるということで、全額の被害回復は認められませんでした。)

著者ご紹介

弁護士・ファイナンシャルプランナー
2009年5月まで、弁護士過疎問題解消のため設立された、秋田県の能代ひまわり基金法律事務所所長を務める。
現在は東京にて活動し、一般民事(消費者被害・労働・交通事故・相続・不動産関連・債務整理等)、刑事、中小企業法務を広く手がける。

主担当者コメント
 先物取引を始めとするレバレッジ取引では、被害額が数千万円に上る例も稀ではなく、松山さんの取引が短期で終了したことは、ある意味、不幸中の幸いでした。
 ○×商事はそれなりの規模の会社であり、立派なHPもありますが、それでもこのようなひどい事例が生じています。自分が理解できないまま、会社任せの取引を行うことは絶対に止めなくてはなりません。

金融FPからのコメント
 先物取引だけに留まらず、金融資産の取引では、投資家が自分が何をしているのか理解していないうちに多額の損失を発生させるケースが後を絶ちません。
 まずは、取引の内容、商品の内容について十分理解する事、また理解できないのであればその取引は行わない事が重要です。 また「絶対儲かる」という話はどこにもないので、そのような台詞を伴う勧誘ははっきりと断る勇気が必要です。
 
2015/09/17
誰にどのように相続させるのか?

2015/07/10
タイトルを入力


 
▲このページのTOPへ