個人15

突然降りかかった借金に負けないで!

背景
 ご相談者の秋田さん(仮名)は30代の既婚男性で、小学生のお子さんがいます。高校卒業後に運送会社に勤務し、結婚後も実家でご両親と同居していました。
 自宅は、父親が10年前に銀行から35年の住宅ローン(毎月支払額9万円)を組んで購入したもので、秋田さんがその連帯債務者となっていましたが、実際の支払は父親が行っていました。
 秋田さんはギャンブルもせず、堅実そのものの生活を過ごしていましたが、2年前、父親が急死したことで、生活環境が一変しました。
  父親が亡くなった後、秋田さんは、悲しみも癒えぬなか、毎月9万円の住宅ローンの支払いを負担することになりました。のみならず、父親宛に見知らぬ業者から請求書が届いたので問い合わせたところ、実は父親には住宅ローンの他にも借金があったことが判明し、秋田さんは、その借金も相続することになってしまいました。

ご不安
 秋田さんは、住宅ローンの支払に加え、父親が残した借金の支払いにも追われることになってしまいました。どの業者にいくら借金があるのかも分からないまま、請求書が届くたびに支払を行ってきましたが、気付くと、借金総額は450万円、月々の借金返済額は20万円以上にも達していました。
 秋田さんの月収は手取り約35万円であり、貯蓄を取り崩しながら支払を行っていたものの、これだけの借金を返済できるはずはなく、いずれ家計が破綻してしまうことは明らかです。明らかですが、何をどうしていいのか分からないということで、市役所の法律相談室を訪れ、私がご相談を担当することになりました。

アドバイス
1 手続選択~個人再生手続の選択
 まず、住宅ローンと借金の点を除外して秋田さんの家計収支を確認したところ、現状12万円程度の返済であれば何とか余剰が出る生活状況とのことでしたので、住宅ローンと毎月借金返済額の総額を12万円以下に収める方策を考えることとしました。
 住宅ローンの残っている自宅を確保しつつ借金弁済額を圧縮する場合の代表的手段は、裁判所の関与する個人再生手続であり、今回も、同手続の利用を念頭において準備を進めることになりました。
2 住宅ローン以外の借金の圧縮
 個人再生手続を利用した場合、住宅ローン以外の借金については、500万円以内の借金については弁済総額が100万円に圧縮されることになり、これを3年ないし5年で返済する形が基本となります。(*なお、100万円以上の財産があれば弁済総額も増加することになりますが、秋田さんには100万円以上の財産はありませんでした。)
 5年の返済とすれば、これだけでも借金の月々弁済額は約1万7000円となり、計算上、住宅ローンと併せた弁済総額は12万円に収まることになりますが、しかし、これでは全く家計に余裕がなく、冠婚葬祭などの臨時の支出に耐えられませんし、子供の学資への備えが困難になります。
  そこで、本件については、住宅ローンの月々弁済額を減額する手段も併せて検討することになりました。
3 住宅ローンの月々弁済額の圧縮
 住宅ローンの弁済総額そのものを圧縮することは不可能ですが、支払期間の延長によって月々弁済額を減額することは可能です。特に今回は、当初完済予定時点の秋田さんの年齢が50代前半であり、まだまだ働き盛りであることから、支払期間の延長という手段が有効となります。
 支払期間の延長については、金融機関が任意に応じてくれることもありますが、今回については、35年以上のローンは扱っていないという理由で拒絶されました。このように金融機関が反対した場合でも、個人再生手続では、(最終弁済時の年齢が70歳を超えない範囲で)弁済期間を10年間延長させることが可能であり、その結果、住宅ローンの月々弁済額を約6万7000円まで圧縮することが可能となりました。
4 個人再生手続の申立弁済額の圧縮成功!
 個人再生手続を裁判所に申し立てるためには、多数の資料を整えることが必要であり、中々準備が整わない相談者も多いのですが、真面目な秋田さんはしっかりと資料を揃えて下さったので、ご相談から3ヶ月後には裁判所に申し立てを行うことができました。
 個人再生手続の進行は各地の裁判所によって大きく異なるのですが、秋田さんの場合は、申し立ててから6ヶ月後に再生計画が認可されました。
 ご相談頂いてから9ヶ月、30万円近かった秋田さんの毎月弁済額は約8万4000円まで減額されました。真面目な秋田さんは、将来の子供の学資を蓄えつつ、5年後の借金完済に向けて今日も頑張っています。

著者ご紹介

弁護士・ファイナンシャルプランナー
2009年5月まで、弁護士過疎問題解消のため設立された、秋田県の能代ひまわり基金法律事務所所長を務める。
現在は東京にて活動し、一般民事(消費者被害・労働・交通事故・相続・不動産関連・債務整理等)、刑事、中小企業法務を広く手がける。

主担当者コメント
 個人再生手続は要件がいろいろと難しいのですが、今回の秋田さんのケースは、秋田さんに安定した収入があり、かつ、今後長期間にわたって働くことが可能であったことから、個人再生手続の利用によって大きな効果をあげることができました。

不動産FPからのコメント
 一般的には、住宅ローン借入時には団体信用生命保険をセットで加入しますので、今回のように親の死亡時に住宅ローンを背負うケースはまれだと思います。
 また、10年のローン返済が経過していることを考慮すれば、住宅ローンの残債権と不動産の時価評価を比較しても良いと思います。仮に不動産の評価の方が高いケースであれば、不動産を売却して債務整理を行うという選択肢も考えられます。
 
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