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相続税の納税資金が無い!そんな時のとっておき納税方法を教えます

相談
 平成20年9月1日、会社を経営していた西尾さん(仮名)に相続が発生しました。母親は既に死亡しており西尾さんの相続人は子供のAさん、Bさんの2人です(共に30代)。相続財産は主に次のとおりであり、相続税額は2億円と算定されました。

現預金
相続税評価額1億円
上場株式
1億円(相続税申告時には3000万円に値下がり)
自宅
1億円
会社の土地
4億円(借入金の担保に供されている)
自社株
3億円

 遺産分割自体はAさん、Bさんが評価額で2分の1ずつ分け合うということで合意したのですが、ここで納税が問題となります。相続税の納税額2億円に対し、現預金は1億円しかありません。相続発生当初は上場株式を売って現金化すれば何とかなると楽観していたのですが、その後リーマンショックを挟んで株価が大暴落してしまい、いま株式を売って現金化しても3000万円にしかならず、まだ7000万円も足りません。納税期限はもう間近に迫っています。このままだと大切な会社の土地や長年住んでいた自宅を売って手放すしかないのかと途方に暮れています。

ご希望・ご不安
今回の西尾さん相続について、相続人のAさん、Bさんのご希望、ご不安は以下のとおりです。
・財産は2分の1ずつ均等に分け合いたい。
・自宅や会社の土地は換金することなく相続したい。
・納税は現金と上場株式で済ませたいが、合計しても申告時点で納税額に足りていない。

ご提案
(1) 遺産分割について次のように提案しました。
 現預金1億・・・Aさんが相続
 自宅1億・・・Aさんが相続
 上場株式1億・・・Bさんが相続
 それ以外の財産・・・Aさん、Bさんそれぞれの財産額が均等になるように分割
⇒Aさん、Bさんの財産取得額が均等分割により同額になるので、納税額もAさん、Bさんそれぞれ1億円ずつの同額となります
(2) Aさんについては現預金1億で相続税を納付し、Bさんについては上場株式1億を物納することで相続税を納付するよう提案しました。
【ポイント】
 相続税の納付方法の一つに物納という方法があります。これは相続税を金銭で一時納付することが難しく、かつ分割で納付することも困難といった場合に、土地や株式といった現物を差し出すことで相続税を納付することができるという方法です。
 以下に西尾さんの相続に関する上場株物納のポイントを整理します。
・ 物納時に差し出す現物の価額は相続税評価額で評価します。従って、申告時に値下がりしていたとしても、相続開始時点の価額(1億)で引き取ってもらうことができます。
・ 物納ができるのは、金銭納付が困難であるときのみです。現金と株とをまとめて相続してしまうと金銭納付が困難とはみなされず物納ができないため、今回は預貯金をAさん、上場株をBさんに相続させます。
・ 物納には優先順位があり、株よりも土地のほうが優先順位は高くなっています。Bさんが上場株を物納するためには優先順位の高い現預金と自宅土地とをAさんに相続させ、上場株を物納するしかない状況を作る必要があります。(ちなみに担保に供されている会社土地は物納できません。)

著者ご紹介

税理士・ファイナンシャルプランナー・宅地建物取引主任者
野村證券㈱で約10年間、お客様目線でのコンプライアンス業務・接客業務に従事。現在は税理士法人にて税理士業務全般を行っている。相続・事業承継に関する事案に数多く携わり、資金繰りや資産運用に関する相談も得意としている。

主担当者コメント
 今回のご相談ではAさんもBさんも現預金と上場株を使って無事納税することができ、会社の土地も自宅も自社株も守ることができました。今回は上場株式の物納でしたが、ケースに応じ、利用価値の低い土地を物納するような相続対策や遺産分割も十分考えることが可能です。

弁護士からのコメント
 共同相続人間に十分な意思疎通がない場合、遺産分割後の納税については各自勝手にしなさい、というところで遺産分割協議が終わってしまいがちです。
 しかしながら、相続税については各共同相続人に連帯納付義務が課せられており、相続人の一人が納税できない場合、結局、その未納分はその他相続人が負担することになりますので、各人の納税方法まで想定した遺産分割協議を行う必要があります。
 
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