個人12

離婚の現実 ~いろいろ権利はあるけれど~

背景
 相談者の行徳さん(仮名 30代)は、サラリーマンの夫と、1歳になる男の子の3人で、分譲マンションに暮らしです。
 夫は、特に浮気をするわけでもないのですが、妻である行徳さんよりも夫の両親の顔色ばかりを窺い、両親の言うことばかりを聞いています。行徳さんは、そんな夫が不満で仕方がありません。
 行徳さんは、ある時、そのような夫に対する不満が爆発してしまい、夫婦喧嘩をし、その勢いで子を連れて実家に帰ってしまいました。憤懣やるかたない行徳さんは、このまま離婚してしまおうと考えています。

ご希望
興奮状態で相談に訪れた行徳さんの希望はただ一つ、離婚したくないという夫と何とかして別れたい、という点だけでした。

アドバイス
1 夫が離婚したくないという場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。調停では、調停委員が間に入って相互に話を聞き、その結果離婚やむなしという心証であれば、夫に離婚を決断するよう促してくれます。それでも夫が離婚に応じない場合には、審判という手続に入り、裁判官が離婚させるかどうかを(夫の意向に反してでも)決めることになります。
 審判では、離婚事由があるかどうかで判断が決まるのですが、単なる性格の不一致・価値観の不一致といった漠然とした理由だけでは離婚事由と認めてもらえません。
 この点は、夫婦生活の最初から遡って話を伺わないと何ともいえないのですが、行徳さんが家を飛び出した理由を聞いた限りでは、中々離婚事由とまでは認められないように思われ、(行徳さん側からの慰謝料支払いも念頭においた)調停段階での解決に期待するほかない印象でした。
2 行徳さんの質問に対する回答は以上の通りなのですが、それとは別に、相談を受けている中で気になることがありました。
行徳さんは、離婚についてある程度調べており、「財産分与で夫の財産の2分の1がもらえる」「離婚後は子どもの養育費を夫に請求できる」「年金も夫の年金の2分の1を請求できる」といったことを知っていました。知っていたのですが、どうも、これらについて誤解ないし過大な期待がある印象をうけました。
(1) まず、財産分与について、行徳さんは夫から夫名義の自宅マンションを譲り受ければそれでよいとの心づもりでしたが、自宅マンションには夫名義の住宅ローンがかなり残っていますので、どちらかといえば夫がそのままマンションの所有者となる方が素直な財産分与となります。
(2) また、養育費について、行徳さんは養育費に完全に頼って離婚後の生活設計を立てているようでした。
 それは全く間違いではないのですが、現実には、離婚調停で子供の養育費を支払う旨の合意がされても、それが守られない事案が多く、強制的に回収する手段にも絶対的なものはないので、預貯金積み立て等の自衛措置はかせません。
(3) また、年金分割について、行徳さんは夫に将来支給される金額の半分がもらえるものと考えていましたが、不正確です。
分割されるのは夫の厚生年金部分のみであり、それも婚姻期間中に限ってのものですので、婚姻期間の短い夫婦の場合にはそれほど大きな金額にはなりません。年金事務所でおおよその金額を調べることができますが、行徳さんの場合、増える金額は月額1万5000円程度でした。
3 これらの誤解を行徳さんに説明したところ、特に年金額の少なさについて行徳さんは大きなショックを受けたようでした。更に、離婚後の生活について、今後かかる生活費や養育費などを簡単にシュミレーションした結果、パート勤務を増やしたとしても、行徳さんの生活はだいぶん苦しくなることが分かりました。
 これらの検討を踏まえて行徳さんはもう一度夫と話をし、離婚はしたくないが、夫の両親について干渉しないようにして欲しいとお願いしたそうです。夫も異存はなく、結局お二人の離婚話はなくなりました。

著者ご紹介

税理士、ファイナンシャルプランナー(CFP)。小野里秀研税理士事務所所長。大学卒業後、10年以上都内の会計事務所に勤務。数多くの個人事業主、会社経営者の税金対策や借入、資金繰り等の業務に従事。現在は、相続税申告業務や資産税コンサルティングをメインとして、幅広く業務を行っている。

主担当者コメント
養育費の回収について補足しますと、一般的には給与差押えが有効ですが、相手方が勤務先を変えると新たに差押えを行わなければなりません。そして、給与差押えを受けた相手方は、会社にいづらくなってか退職してしまうことが比較的多く、また、離婚後に相手方の勤務先を調べることは案外困難であることが多い印象です。
もちろん、払わない相手が一番悪いのですが、相手の勤務先が分からなくなってしまうと、中々効果的な回収手段がないのが現状です。

税理士からのコメント
 今回は離婚にまで至りませんでしたが、もし行徳さんが離婚による財産分与を受けていた場合、よほど過大なものでない限り行徳さんに贈与税は課税されません。しかし、財産分与を行う夫は、(a)「自宅マンション」の分与が譲渡所得に該当し所得税が課税されます。ただし、離婚成立後の分与でしたら「3000万円の特別控除」の特例を適用後の譲渡税で済みます。また(b)夫からの「養育費」がお子様達の生活費として認められれば、お子様のみ扶養控除の対象として夫は年末調整等を行うことができることもあります。
 
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