個人11

離婚に踏み切る前に考えなければいけないこと

背景
 ご相談者の福岡さん(仮名)は、26歳の時に夫と結婚し、結婚生活17年目。私立高校1年の長男、公立中学校2年の長女がいます。結婚後は家庭に入って夫を支え、その内助の功あって、夫も仕事に打ち込んでいます(現在の年収は約650万円)。子どもも楽しく学校に通っているようで、傍目には幸せな家庭のように思われました。
 しかし、実は、5年前から福岡さんは夫と別居しており、現在は子ども達と一緒に福岡さんの実家で生活しています。特に家庭内暴力があったとか、不倫が発覚したなどの明確な理由があったわけではありませんが、何となく、お互いの価値観にズレを感じ、生活を共にする理由も分からなくなって別居に至ったとのことでした。夫からは毎月15万円の生活費が送られており、そのため、福岡さんは別居後も働く必要はなく子育てに専念してきました。
 別居生活も5年目になり、何となく、お互いに離婚を意識する日々が続いています。

ご不安
 福岡さんの実家には評判の良い私立高校があります。長男はそこに通っており、将来は長女もそこに通わせたいと思っています。授業料その他の諸学費は月6万円程度。毎月15万円の生活費では2人を通わせるのには無理があり、夫に送金額の増額をお願いしようか、それとも自分が働きにでようか、悩んでいるところです。
 このような現状で、仮に離婚するとなると、何を決めなければならず、生活はどのように変わるのでしょうか。離婚せずとも、夫から突然生活費の送金を打ち切られるようなことがあるのでしょうか。そのような漠然とした不安を抱いて福岡さんは私の事務所を訪れました。

アドバイス
1 現在送金されている毎月15万円の生活費について
 夫婦間はお互いに助け合わねばならない、というのは別居中の夫婦についても同様であり、収入の多い方は少ない方の生活費を分担して負担しなければならないとされています(=婚姻費用の分担)。その金額の相場については、家族構成や夫婦相互の収入額ごとにおおよその目安を示した算定表があり、福岡さんの家では、算定表に従った婚姻費用はだいたい14万円前後となります。
  従って、こまかな調整の問題はあるものの、一応、現在の夫の送金額は相場の範囲内であり、少なくともこれを夫が一方的に打ち切るような事態が正当化されることにはならないと思われます。
2 離婚する場合に決めなければいけないこと
(1) 仮に離婚するとした場合、まずは、誰が子どもの親権者となるのかを決めなければなりませんが、本件では、福岡さんが親権者となることで争いは生じないようです。
(2) 次に、これまで夫婦が共同で築いた財産を分割することになります(財産分与)。その分割割合は、特段の事情がない限り、2分の1ずつとなります。福岡さんは、お互いの財産全てを把握しているわけではないとのことでしたので、これについては今後の調査が必要ですね、というアドバイスに止まりました。
なお、夫が会社員で厚生年金に加入している場合には、将来の年金の分割も行われることになりますが、これについても、分割割合は原則として2分の1ずつとなります。
(3) 更に、どちらか一方のせいで結婚生活がダメになったという場合には、慰謝料請求の余地が生じますが、本件では、特にそのような事情はないようでした。
(4) 問題は、離婚後の財産関係についてですが、離婚後は夫に婚姻費用分担義務はなくなりますので、原則として、夫からの生活費の送金は受けられなくなります。
 ただ、子どもを養育している場合には、子どもの養育費としての送金を受けることはできます。この養育費についてもおおよその目安を示した算定表があり、福岡さんの家では、算定表に従った養育費はだいたい12万円前後となります。
3 福岡さんの離婚後の生活について
 以上の通り、仮に離婚した場合には、15万円の生活費の送金はなくなり、養育費として12万円前後を受け取る形の生活となることが予想されます。この場合、福岡さん自身が働く必要がでてくるのはもちろんですが、長女を私立高校に進学させることも、実家の助力などがなければ金銭的に相当厳しい状況となりそうです。
 子どもを私立高校に行かせることを夫も望んでいるのであれば、それに応じて養育費を増額してもらうということもありえますが、これは夫の気持ち次第なので、当然にあてにすることは危険です。
 このような金銭的な現実を前にして、福岡さんは、まずは仕事に就いてどれくらい稼げそうか確認してから離婚のことを考えることにしました。

著者ご紹介

弁護士・ファイナンシャルプランナー
2009年5月まで、弁護士過疎問題解消のため設立された、秋田県の能代ひまわり基金法律事務所所長を務める。
現在は東京にて活動し、一般民事(消費者被害・労働・交通事故・相続・不動産関連・債務整理等)、刑事、中小企業法務を広く手がける。

主担当者コメント
 離婚はお金の問題だけではありませんが、それでも、お金の問題は子どもの将来や自分の今後の生活設計など、多くのことに関わってきます。家庭内暴力や子ども連れ去りなどの緊急事態でなければ、離婚前に就職先を見つけるなどの準備をしてから行動に移すことをお勧めします。

保険FPからのコメント
 離婚を切掛けに保険内容を見直し・変更することはよくあります。まず、現在加入の保障額が今後払う予定の養育費と比べて大きすぎないかを確認します。そして死亡保険金受取人も前配偶者ではなく、お子様に変更します。(前配偶者は法定相続人から外れるため、死亡保険金の受取人として設定することができません)また、医療保険など妻が被保険者となる保険契約が夫となっている場合は、離婚後契約者を妻に変更する必要があります。離婚後も支払いを継続できる保険料かどうかを確認しましょう。
 
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