個人10

ご主人の前妻との間の子供と相続争い、家業が危機に!?

背景
 相談者の辺見さん(仮名)は、ご主人(前妻と離婚後、再婚)との間にA君(未成年)がいます。もともとご主人は和菓子の店舗を経営し、その土地建物はご主人単独所有でした。辺見さんは、ご主人の店の経営を手伝っており、ご主人は常々、A君に店を継がせると聞いていました。
 しかし、最近の不況でご主人の店の経営は苦しくなり、借金こそ無かったものの、ご主人名義の預貯金はほとんどありません。
 そのうち、ご主人が急死してしまいました。
 ご主人の葬儀が終わった後、辺見さんは、葬儀に出席していたご主人の前妻に呼び止められました。前妻には、ご主人との間にB君(未成年)がいます。前妻は、辺見さんに対し、B君にご主人の遺産の相続をする権利があると言いました。

ご不安
 辺見さんは、ご主人の店の経営を手伝っていたのだし、ご主人からは、A君に店を継がせると聞いていましたので、今更B君に相続をする権利があるといわれても困りますし、B君に店に関わって欲しくもありません。
 どうすればよいのでしょうか。

アドバイス
1 このような場合、辺見さんのような立場の相続人としては、まずはB君に相続放棄を打診してみることになります。相続放棄とは、文字通り、相続人としての権利を放棄してもらうということであり、他の相続人に相続放棄を強いることはできませんが、相続開始に至るまでの諸事情如何によっては応じてもらえる可能性がないわけではありません。
2 しかしながら、今回の場合には、B君は相続放棄に応じてはくれませんでした。
 その場合、B君も相続人として4分の1の法定相続分が認められることには間違いがないので、全くB君に相続させないということは、残念ながら不可能です。
 本件では、店舗の土地建物しか遺産がないので、単純に考えると、土地建物の4分の1がB君のものになってしまうということになります。
しかしながら、辺見さんは、前妻及びB君とはあまり付き合いが無く、しかも前妻との仲もあまり良くないため、土地建物をB君も含めた共有名義にすると、店の経営で面倒なことになることは、火を見るより明らかです。
3 このような場合、共有持分4分の1に相当する金額を辺見さんがB君にお金で支払い、土地建物自体は辺見さんとA君だけの共有とさせる形での遺産分割方法が考えられます(代償分割)。
 本件でもこのような対応をとることにしましたが、代償分割では、(結局B君に代償財産が支払われなかったという事態を防ぐため)、辺見さんに代償金を支払えるだけの財産がなければならないとされています。
 辺見さんにはこれを支払うだけの手持ち資金はなかったのですが、店の経営を続けるために背に腹は代えられないということで、借金をして代償金を用意し、代償分割方法での遺産分割を成立させました。

著者ご紹介

弁護士・ファイナンシャルプランナー
2009年5月まで、弁護士過疎問題解消のため設立された、秋田県の能代ひまわり基金法律事務所所長を務める。
現在は東京にて活動し、一般民事(消費者被害・労働・交通事故・相続・不動産関連・債務整理等)、刑事、中小企業法務を広く手がける。

主担当者コメント
 本件では、店の土地建物の所有関係にB君が関与してくる事態を防ぐことはできましたが、辺見さんには借金が残ってしまいました。
事前対策としては、ご主人が土地建物全てをA君に相続させる旨の公正証書遺言を作成しておけばよい事案でした。
 その場合でも、B君には遺留分というものがあり、相続財産の8分の1については相続権を持つことになりますので、いずれにせよ代償金の準備は必要ですが、これについても死亡保険金で賄うよう生命保険に加入するなどしておけば、借金に頼らずとも対処ができたことになります。
 このように、万が一自分が死んだ場合のことを考えて、事前に準備をしておけば、残されたご遺族の争いも未然に防ぐことが出来ます。

税理士からのコメント
 代償分割の方法としては当事者間の話し合いにもよりますが、辺見さん又はA君所有の不動産をBさんに渡すという、現物による代償分割も行うことが可能です。ただしこの場合には、不動産を渡す辺見さん又はA君については不動産の譲渡所得税を、不動産を受け取るB君については贈与による不動産取得税・登録免許税等の登記費用を負担しなければなりません。いずれにしても、事前の話し合いや遺言書の作成、必要とされる代償金の準備など、相続発生前に充分な対策を講じておく必要があることが非常に大切です。
 
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