個人08

老後の見守り契約

背景
 東京で一人暮らしのマスヱさん(仮名)は76歳。5年前に夫死去後は独居生活。
長男は北海道の大学入学を機に転居し、妻の実家で酪農経営。長女は、海外勤務。長男長女とも、実家に戻る予定はありません。
 マスエさんも、当初は気楽な女一人暮らし、趣味や旅行にと活発に過ごしていましたが、だんだんと持病の高血圧や糖尿病が重荷になり、家で過ごす時間が増えました。これから先、もしものことがあった時に頼れる身内がいないので、どうしたらよいのか、相談に行きました。

ご不安
 マスヱさん自身は、今は気持ちがしっかりしているつもりですが、これから先、夫が残してくれた財産がある分、独居老人に対する悪徳商法や詐欺に騙されないか不安に感じています。まだ、自分がぼける前から備えられる法的手続きがあるとテレビで見たので、自分もお願いしたいと思っています。なかなか東京に帰れない子どもたちも、賛成してくれています。

アドバイス
 「任意後見契約」を結ぶと、将来、老齢により判断能力が低下した時に、代わりに任意後見人に法律行為をしてもらうことができます。任意後見人には、誰でもなれますが、適任の身内が近くにいない場合は、信頼のおける行政書士など法律面の専門家に頼むことも考えられます。
実際に任意後見をしてもらう前の段階から、心身の状態に応じた契約を適用させていくことが効果的です。
1.まだまだ元気なときは・・・
<見守り契約>

自分がどれだけ健康かどうか、いつから後見してもらうかの判断するためには、任意後見人としてお願いしたい人に、日ごろの状態を知っておいてもらう必要があります。月に1回程度「ぼけていないか」電話や面談で安否確認してもらい、困りごとの相談などを聞いてもらうのが見守り契約です。
2.判断能力が低下したら・・・
<任意後見契約>

どのような法律行為を行ってもらうかは、自分自身の心身の状態が確かなうちに、事前に公正証書による任意後見契約書を作成しておきます。
あらかじめお願いしていた任意後見人から、裁判所に「任意後見監督人」を選任してもらうための手続を行ってもらうことで、任意後見手続が始まります。
3.足腰がつらいから、
  代わりに銀行に行って来て・・・
<財産管理委任契約>

任意後見契約は、精神上の障害などで判断能力が落ちてしまったときに発効しますが、この契約は、体力上の問題などで、こまごまとした事務手続を誰かに頼みたいような時にも利用できます。
マスヱさんは、上記3つの契約を結ぶことにしました。今では毎月の見守り電話がくるのを、娘からの連絡と同じように日々の励みにして過ごす毎日です。

著者ご紹介

おぎゅう行政書士事務所・所長。行政書士・ファイナンシャルプランナー。
法律事務所・法テラス勤務を経て開業。会社設立、建設業・宅建業・風営等の許認可、ビザ申請に関する業務のほか、遺言・相続・成年後見・離婚などの家族に関する法務事務も、やさしく親身に行っている。

主担当者コメント
 今回ご紹介した3つの契約は、マスヱさんが元気に生きていらっしゃる間だけ、有効な契約となります。
 もしも、マスヱさんがお亡くなりになると、任意後見契約はそこで終了してしまいます。死後の事務手続きもお願いしておきたいときは、別途死後の事務委任契約を締結しておきましょう。また、相続については、遺言書を作成し、遺言執行者を定めましょう。
 以上のような手続は、自身や家族の状況をよく理解し、長期的にフォローしてくれる人を定めて、継続的なケアを依頼されることをお勧めします。

弁護士からのコメント
 任意後見制度と類似する制度として、法定後見制度というものがあります。
 法定後見制度は、本人の判断能力が不十分な場合に、親族等が家庭裁判所に後見人の選任を申し立てることで選任されます。これに対して任意後見制度は、その後見人を予め自分で決めておけるという点に特徴があり、その分、本人の意思を尊重した制度となっています。
 ただ、その反面、悪徳商法被害からの救済といった場面では任意後見制度では難があり、一長一短というところです。

保険FPからのコメント
 今回のマスエさんのようなケースに該当される方が保険の加入を希望されることがあります。理由としては、保障を得ることというより、500万円×法定相続人の数に相当する金額の保険金は相続税の非課税枠を使用したい、遺言のように死亡保険受取人を指定したいということが多いです。
 ただ、保険に加入しているという事実を、死亡保険金受取人に相当する方や死後の事務委任契約をお願いする方にきちんとお伝えしておかないと万が一の時に給付申請漏れとなり、保険金が受取れない・非課税枠を使用できないということになりかねませんので、事前にお伝えすべき方にはお伝えしておくことが大切です。
 
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