事業05

自分で作った会社を子供に円満に継がせたい。そんな親心を叶えます。

背景
 竜田さん(仮名)は60代の不動産株式会社の社長で、その会社の株式は全て竜田さんが持っています。竜田さんには、離婚した妻との間に2人のお子様(既に結婚して独立)がいます。
 竜田さんは、若くして不動産会社を設立し、景気に左右されながらも何とか会社経営を順調に行ってきました。現在は長男も会社の事業を手伝ってくれています。
 竜田さんは、病気らしい病気もしたことがなく、このまま会社を順調に経営することだけを考えていましたが、昨年の夏の検査で脳腫瘍が見つかり、病院で手術を受けました。
竜田さんは、この時初めて自分がいずれ死ぬかもしれないということを意識し、今の会社を今後どうするのか真剣に悩み始めたのでした。

ご希望
 竜田さんは、子供を不公平に扱いたくないが、事業を手伝ってくれる長男に子供に会社を承継させ、次男にはそれなりの金銭を贈与したい、という希望をお持ちでした。また、この点を含め、子ども同士で竜田さんの死後に遺産分割問題が起きることだけは避けたい、というご希望でした。

アドバイス
1 事業承継について
(1) 長男に会社を承継させるためには、会社の株式や竜田さん名義の事業用財産を長男に相続させることが必要となりますが、これ自体はそのような内容の遺言書を作成すれば実現可能です。(*生前贈与の方法もありますが、以下の問題点は変わりませんので、省略します。)
 問題は、その場合に、長男が譲り受ける財産が多くなり、次男との間で不公平が生じる点です。
次男には、少なくとも遺産の4分の1については(次男が望めば)絶対に相続できる権利があり、これは遺言書によっても妨げることができません(遺留分)。また、ここで「遺産の4分の1」という場合の計算の基礎となる「遺産」には、竜田さんから長男に承継された株式や事業用財産も含まれます(特別受益)
 従って、竜田さんとすれば、次男が遺留分の主張をする場合に備えて、会社の株式等とは別に、4分の1相当額の財産を残しておかなければなりませんが、株式の価値が高ければ高いほど、そのような対応は困難です。
(2) このような場合の一つの対処として、平成21年3月1日に施行された「遺留分に関する民法の特例」を活用することが考えられます。
 これは、事前に推定相続人である長男と次男とで、長男が譲り受ける株式や事業用資産を、遺留分算定の際に考慮しない(=基礎財産に含めない)ことを内容とする書面を作成し、これについて経済産業省(地方経済産業局)への確認申請を行い、更に家庭裁判所の許可を得ることで、同書面内容通りの遺産分割をすることが認められるというものです。
2 その他遺産分割紛争の回避
 会社株式等以外の財産については、遺言書で分割方法を定めておくことが望ましいですが、その際、「どの子供にどの遺産を相続させるのか」ということだけでなく、「どうしてそのように分割するよう決めたのか」という理由を明記する事を勧めました。遺産分割問題は心の問題でもあるので、このような記載一つでも大きく結果が違ってきます。
 なお、遺言は自分で作成することもできますが、その有効性等を巡って争いが生じる危険性が大きいので、公証人に作成させる公正遺言証書の作成を勧めました。

著者ご紹介

弁護士・ファイナンシャルプランナー
2009年5月まで、弁護士過疎問題解消のため設立された、秋田県の能代ひまわり基金法律事務所所長を務める。
現在は東京にて活動し、一般民事(消費者被害・労働・交通事故・相続・不動産関連・債務整理等)、刑事、中小企業法務を広く手がける。

主担当者コメント
 長男次男が合意書面を作成できるほどの関係であるならば、そもそも次男が遺留分を声高に主張するという事態も生じない可能性が高いので、遺留分に関する民法の特例がめざましい効果を有するということではありません。
 ただ、相続開始前に話し合いの機会を持つということ自体が円滑な事業承継・遺産分割にとって極めて重要な要素であり、合意書面作成も、その一場面として重要な意味を持つのであろうと思います。

税理士からのコメント
 今回の遺留分に関する特例には「自社株式を遺留分の基礎財産に含めない」以外にも「自社株式を遺留分に含めない見返りに父親の面倒は長男が見続ける」とか「遺留分に関する自社株式の価格を、相続時でなく合意時の価格に据え置く」といったような様々なオプションをつけることも可能です。遺産争いは些細なボタンのかけ違いから生じてしまうものであり、相手の立場や感情を思いやり、充分な対話をする機会を持つことが大切です。
 また、後継者が相続した自社株については、その相続税を最大で80%猶予するという特例も創設されています。どの特例も事業承継に頭を抱える中小企業の経営者の為に設けられた制度ですので、ご自身の会社について一度検討してみることをお勧めします。
 
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