事業04

二代目だからといって継げない建設業許可

背景
 大工を営んでいる畠中さん(仮名61歳)。ご近所でも、家を建てるときは3丁目の畠中工務店さんと言われる腕前が自慢です。最近、海外生活から戻ってきた末っ子の直行さん(仮名27歳)が、家業を手伝ってくれるようになり、分譲住宅建設の下請なども受注しています。現場での働きも、なかなかのものです。
 そんな畠中さん。最近、関節が痛むようになり、病院通いをするようになりました。
 自分はまだまだ若く働き盛りだと思っていましたが、そろそろ現役引退するための準備が必要と考え、相談にいらっしゃいました。

不安
 畠中さんは、経営者としても技術者としても頼りになる直行さんに、畠中工務店の跡を継いでほしいと思っています。家族を集めて兄弟にもその旨を伝えました。遺言にも遺してはっきりさせておくつもりです。
 畠中さんは個人事業主として、県の建設業(大工工事)許可を受けて事業を営んでいますが、遺言さえあれば、代替わりの準備は万端でしょうか。

アドバイス
 建設業許可は営業を行なう個人または法人に与えられます。個人事業の場合であれば、畠中工務店という事業体に対してではなく、畠中さん本人に与えられた許可ということになります。
 建設業の場合は、個人に与えられている許可は相続されません。たとえ遺言で「直行に事業を継がせる」と定めていたとしても、畠中工務店の建設業許可は、直行さんには移転しないのです。畠中工務店の二代目であっても、新しい事業主となる直行さんが改めて許可を申請しなければなりません。
 では、新規に建設業許可を取得するためには、どのような条件が必要でしょうか。
1.経営業務の管理責任者が常勤していること
 経営業務の管理責任者となるには、許可を受けようとする建設業の業種において、5年以上の経営業務の管理責任者経験を有していることが必要です。
 大工の許可を受けたい場合は、大工の業で管理責任者をしていた経験が5年以上ということです。
もしも大工の許可を受けたいのに、内装工事業でしか管理責任者の経験しかない場合は、7年以上の経験を有している必要があります。
2.営業所ごとに専任の技術者が常勤していること(同一営業所であれば1と兼任可)
 各建設業務に応じた国家資格等か、10年以上の実務経験が必要になります。
 大工の専任技術者であれば、一級または二級建築士や、建築大工の検定合格などが、指定されている資格です。
3.財産的基礎・金銭的信用
 500万円以上の資本・資金調達能力が必要です。建設業許可を受けるには、経営業務管理責任者の必要経験年数が長期にわたるため、二代目に跡を継がせるためには、事業承継実行の10年くらい前には計画を立てておく必要があります。
 建設業の許可を受けた法人の常勤役員経験がない人が経営業務管理責任者となる場合や、国家資格を持っていない人が実務経験をもって専任技術者として許可申請を行う場合は、証明必要年数分(5~10年分以上)、建設工事の請負契約書や請求書、住民税特別徴収税額通知書などの書類を提出する必要があり、用意しなければならない書類は膨大になります。
 現実問題として、5年10年前の書類を、しかも原本で提出することは困難を極めます。「今まで本当に何十年も仕事をしてきた。しかし、そんな昔の書類は残っていない」と、建設業許可申請の窓口で困っている方が多く見受けられます。必要書類が揃わなければ、申請は受理されません。
直行さんも「二代目として仕事をしてきた」というだけでは許可の条件が整わない可能性があるのです。
 検討の結果、直行さんが経営管理業務に携わっていた経験を容易に証明し、スムーズに事業承継をさせるために、まず畠中工務店を法人化し、新設法人として建設業許可を取得した上で、事業承継のための体制を整えることにしました。
直行さんは、その常勤取締役となることで、経営管理者としての経験年数を証明します。また、国家資格を取得していなかったので、大工の専任技術者となれるよう、二級建築士の試験勉強を始めることにしました。
 直行さんの許可要件が整った時には、畠中さんは安心して引退したいと考えています。

著者ご紹介

おぎゅう行政書士事務所・所長。行政書士・ファイナンシャルプランナー。
法律事務所・法テラス勤務を経て開業。会社設立、建設業・宅建業・風営等の許認可、ビザ申請に関する業務のほか、遺言・相続・成年後見・離婚などの家族に関する法務事務も、やさしく親身に行っている。

主担当者コメント
 事業承継では、「許認可の承継」についても、忘れずに検討しましょう。
 業によって、相続で許認可の承継が認められているものもあれば(個人タクシーなど)、畠中さんの場合のように、いろいろな方策を立てなければならない場合もあるからです。
 特に、国家資格や一定の経験などが許認可の必要条件になっている場合は、ご注意ください(建設業許可、宅地建物取引業など)。

弁護士からのコメント
 事業承継の場合、一般的に、事業用資産の価値が大きいために、これを承継する相続人とその他相続人の間の不公平間の調整が大きな課題となります。
 加えて、よく問題となるのが運転資金等の借入債務の承継です。負債は、事業を承継するとしないとに関わらず、各相続人が法定相続割合に従って当然に承継することになりますので、事業を承継しない相続人が不測の事態に陥ることのないよう、十分な配慮が必要です。
 
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