事業03

従業員のために税制を活用しよう!

背景
相談者は30代のネットショップ経営者。数年前に友人と起業し、最近は売上も順調に伸びて利益もそれなりに出るようになりました。木村さん(仮名)は会社の税金対策に頭を悩ませていましたが、創業時から不平も言わずに一緒に働いてくれている従業員の給与等の福利厚生を厚くしてあげたいと常々考えるようになっていました。しかし福利厚生を厚くしても会社や従業員の税負担を増やすことなく、上手に税制を活用する方法を模索していました。

アドバイス
 福利厚生を厚く、という考え方を広く捉え個人だけでなく法人の節税にもなる例として経営者の方に「借り上げ社宅」「出張旅費」「食事の補助」「社員旅行」「教育訓練費」「生命保険」等を挙げました。その中で特に節税の効果が高いと思われる「借り上げ社宅」「出張旅費」「食事の補助」「社員旅行(レクリエーション行事を含む)」について細かく説明をしました。
(1) 「借り上げ社宅」
 従業員が個人で契約している家賃12万円の賃貸住宅があるとのことで、この賃貸住宅を法人契約にして、従業員に借り上げ社宅として利用することを提案しました。その際、仮に税務上認められる社宅家賃2万円を従業員から徴収する。法人が負担する給与を10万円減らして30万円の給与とし、法人の家賃負担が12万円でも、従業員から家賃を2万円徴収しているので、法人の現金負担額の合計は40万円と変わらずに、家賃負担分を含めた個人の手残り額は増えることになります。その効果は(下記算式参照)月に(B)-(A)=6,400円、年間で6,400円×12月=76,800円も手取りが増えることになります。
 また給料が減ると社会保険料負担が個人、法人とも減少することも説明しました。
(A)〔当初個人契約〕    
月給40万円-所得税13,000円-家賃12万円=手残り額267,000円
法人経費 40万円(給料)
(B)〔法人契約後〕 
月給30万円-所得税6,600円-2万円(家賃)=手残り額273,400円
法人経費 30万円(給料)+12万円(家賃)-2万円(受取家賃)=40万円
※計算式内で扶養は1人として、社会保険料・住民税は考慮しておりません。
(2) 「出張旅費」
出張がある場合に日当や出張旅費を支給する。同業他社の規定などを参考にして『旅費規定』を作成したうえで日当や出張旅費を支給することを提案しました。支給する日当や出張旅費は特に高額でなければ、個人の所得税課税の対象にならず支給額全てが無税で個人のものになります。法人は支給額について経費になりますし、消費税の課税対象とすることができます。
(3)「食事の補助」
 残業や宿直をした従業員に支給した食事について、従業員は給与として課税されず、法人の経費になります。したがって給与手当とするよりは残業時の食事を出す事をオススメします。しかし、金銭で食事代を支給すると食事手当として給与として課税されるので必ず現物支給するように注意が必要です。
 また食事の現物支給については、食事代の半分以上を従業員が負担をして、使用者の負担額が月3,500円以下の場合は給与として課税されませんので、課税されない範囲内で上手に法人が従業員の食事を負担することをお勧めしました。
(4)「社員旅行」
 従業員に対して社員旅行の費用を負担した場合に、①旅行期間が4泊5日(海外の場合は目的地の滞在日数)、②全従業員の50%以上が参加していれば、その費用を法人の経費とすることができます。また都合により部門別に時期や行先をずらした社員旅行も特定の者のみに負担している訳ではなく、金額も著しく高額でなければ給与として課税されることなく法人の経費にすることができます。ただ参加しない従業員に金銭で支給する場合は給与として課税されてしまいますので注意が必要です。
 一方、従業員が多すぎで社員旅行等のまとまったレクリエーション行事を行うことができない法人が、それに代えてレストランの食事券や遊園地の招待券(いずれも1万円相当額)を従業員に支給する場合は、給与として課税されます。全体でのレクリエーション行事とは異なり、従業員が各自で使用することになるので個々に給与として課税されることになるのです。
 社内ゴルフコンペを行う法人も注意が必要です。ゴルフは、社会通念上一般的に行われているレクリエーション行事とは認められませんので、ゴルフコンペに要した費用については、賞品等も含めて、参加者の給与として課税されてしまいます。

著者ご紹介

税理士、ファイナンシャルプランナー(CFP)。小野里秀研税理士事務所所長。大学卒業後、10年以上都内の会計事務所に勤務。数多くの個人事業主、会社経営者の税金対策や借入、資金繰り等の業務に従事。現在は、相続税申告業務や資産税コンサルティングをメインとして、幅広く業務を行っている。

主担当者コメント
 その後、その経営者の方は「借り上げ社宅」「出張旅費」についてはすぐに実行していただきました。税制上認められたその2点の「福利厚生費」を活用しただけでも、上手に法人も個人も資金的に余裕ができたと思います。
 経営者の方の多くは「福利厚生費」を会社の経営上の必要に応じて支出したり、経営上必要でないと判断すればその費用を削減したりカットしたりしますが、従業員にとってのメリットは会社の業績にもいい影響を及ぼしますので、是非、長期的な視点で考えることをお勧めいたします。

保険FPからのコメント
 福利厚生を手厚くする手段の選択肢として、保険も考えられます。例えば、従業員が死亡してしまった時に従業員遺族に給付される生命保険を会社が準備すること(団体定期)や従業員の退職金を保険で積み立てること(養老保険など)などは、保険料の全額・半額が損金での計上となり、法人と従業員のどちらにとってもメリットがあります。
 保険に加入される際は、会社の福利厚生規定に保険契約内容が沿っているかどうかの確認や、従業員に保険契約内容を周知徹底させることを忘れず行いましょう。
 
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