事業01

個人事業から法人成りすることのメリットとは!?

相談
 ご相談者の岸田さん(仮名)は都内にアパートを3棟所有する60代の不動産オーナーです。不動産経営は順調で入居率は常時80%以上を保っています。ただ、毎年所得税としてたくさんの税金を持っていかれるのが気に入らない様子です。将来の相続税のことも心配するようになってきており、良い節税と蓄財の方法を考えています。さらにいま一番の気がかりはかわいい一人息子のことです。最近会社をリストラされ今は軽いひきこもりの状態となっているようであり、自分の仕事を手伝わせることで何とか自立の手助けができないものかと思っています。

ご希望
岸田さんのご希望をまとめると、以下の2点です。
・将来の相続に備えた節税と蓄財を行いたい。
・引きこもりの息子を何とか独り立ちさせてやりたい。

アドバイス
上記のご希望を叶えるため、岸田さんの個人事業を法人化することをご提案しました。

ポイント
 個人事業を法人化することについては以下の効果があります。
(1)個人(所得税)と法人(法人税)の税率差効果
(2)オーナーに集中していた所得の分散効果
(3給与所得控除を利用したみなし経費効果
(1) 税率差効果

 所得税の税率は超過累進税率であり、所得が高ければ税率も上がります。住民税も合わせた場合、最高で50%の税率が課されます。一方、法人税の税率は2段階に分かれますが、中小企業の場合、住民税・事業税と合わせても最高税率は40~42%です。岸田さんの場合、現在の税率は最高の50%が適用されており、法人化することにより税率差による恩恵を受けることができます。
(2) 分散効果
 法人を設立(法人化)した場合には、役員を数名選任し、規模が大きくなれば従業員も雇用します。こうした役員や従業員に給与を支払うことによって、これまでオーナーである岸田さんに一極集中していた収入がオーナー・法人・役員・従業員へと分散されます。岸田さんの場合、役員の一人に息子さんを選任することが良いと思われます。給与を受け取る個人は所得が低ければ低い所得税率が適用されます。さらに、税率以上に息子さんが職に就くことで自立し、勤労に対するモチベーションが上がるということが岸田さんのご希望を叶えることにもなります。
 また、岸田さんに集中していた収入が各方面に分散することは将来の相続対策としても非常に有効です。
(3) みなし経費効果
 法人を設立した場合、通常オーナーである岸田さんは役員の一人に選任され、法人から給料の支払(給与所得)を受けます。給与所得には「給与所得控除」というものがあり、受け取った給料のうち一定の金額は経費とみなされて所得から差し引かれます。つまり、法人側では支払った給料が役員給与として損金として認められる一方で、岸田さん個人側でも一定金額を経費とみなすことができます。
 これまでは法律の規制によりこの制度をフル活用できない法人もありましたが、平成22年度法改正により、平成22年4月1日以後に終了する事業年度からはこの規制が撤廃されるため、本事例においてもこの恩恵を受けることができます。
 上記の説明を行った結果、岸田さんは(2)の効果が特に気に入ったため、法人化を実行することになりました。

著者ご紹介

税理士・ファイナンシャルプランナー・宅地建物取引主任者
野村證券㈱で約10年間、お客様目線でのコンプライアンス業務・接客業務に従事。現在は税理士法人にて税理士業務全般を行っている。相続・事業承継に関する事案に数多く携わり、資金繰りや資産運用に関する相談も得意としている。

主担当者コメント
 法人化後の形態としては、①個人が法人に管理料を支払う。②法人が個人の所有する物件を借り上げる。③法人が個人の所有する物件を買い取る。・・・などがあります。ご相談者は今回、比較的実行が容易な①の方法を選びましたが、ご相談者のニーズに応じ様々なプランが考えられます。(ちなみに③の方法を選択した一定期間後にその法人の株式を息子さんに贈与する場合、相続税の財産評価を利用した絶大な税効果を得ることができます)

行政書士からのコメント
 法人を設立するには、定款の作成→定款の認証(公証役場)を経て、資本金の振込、株式会社設立の登記申請(法務局)を行います。印紙代などの実費として合計20~25万円は必要になりますので、心積もりをしておきましょう。
 定款や登記申請書類の雛形は、公証役場や法務局のHPからもダウンロードできますが、あくまでも一般的な書式になります。特に定款認証を受ける際には、公証人と事前打ち合わせも必要になりますので、余裕をもったスケジュールを立てましょう。文言の変更などのために、何度も遠い役場に出向くのは手間なものです。電子申請をしてもらうと実費も軽減できますので、設立手続きは専門家に任せてしまうこともひとつの方法です。
 
2015/09/17
誰にどのように相続させるのか?

2015/07/10
タイトルを入力


 
▲このページのTOPへ